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タマラの日記

インディゴ世代より上のおばさんです。こんな年になって目が覚めるとは思ってもいませんでした。本当に生き方変えれるのかなあ?ウギャ―!

命を動かしたその先に

行動 がわからなくなっていた

何を行動したらいいの?


行動というよりは ただ身体を動かすほかなく
散歩ではたまにしか行かない自然公園へ出向いた
落ち着けて日光が広く当たる場所を探した

5頭ほどの少数の鹿の群れが 朝の陽の光で身体を温めていた


そこへ近づいて 彼らを少し眺めていた
するとまだ成熟しきっていない風な けれども
人を怖がる時期は過ぎているであろう
若い鹿が一頭 スー…と離れていった


私はしばらくその場所に居たがその場所が見える
反対側のベンチへ移動した

ベンチに腰かけ 目を瞑って腹式呼吸をする


ふいに出勤途中のサラリーマンが背後を過ぎゆく
見られてもいないであろう人目を気にして集中できない
場所を変えようと立ち上がり 歩きだすと


大きな公園と公園の間の ひっきりなしに車が行き交う車道のなか
女性が一人で鹿を路肩に引きずって来ているのが見えた

 

警察か専門のどこかに連絡したほうが良さそうだと思い
近づいていくと彼女からも呼びかけてきた


「すみません! 電話してもらってもいいですか!」

「もちろんです」


鹿の後ろ足は折れて骨が丸ごと肉から出てしまっていた
見た瞬間 自分の命がぶるっと震えたのがわかった


誰かがこの鹿を車ではねてそのままにした
ドライバー達はそれぞれに 鹿を避けながら通り過ぎ行き交っていた
この女性は車を止めて 道路の真ん中あたりに倒れていた鹿を
路肩へ寄せてやっていたのだった


(急がなきゃ まだ動いてる)
(専門のどっかなんてわからない とりあえず警察だ)


鹿がびくっと全身を大きくわななかせて ひきつけを起こした


GPSがあるのでだいたいの場所は伝わっているが
居場所を詳細に確認されると少し混乱した
彼女が説明を替わってくれた
警察は愛護協会への連絡のあとかけつけてくれるということだった

彼女は家族を送った帰りで その際はいつもスマートホンを
携帯していないらしく今日も持っていなかった
そこに私が通りがかったのだ


「もう死んでんのか?」 

近くの人らしいおじさんが自転車で通りかかった

 

「警察に連絡しました」
「警察になんか連絡しても何もしてくれへん」

 

言い方はいやだったが 彼は鹿愛護協会に
連絡してくれた後 知らない間に去っていた

ほどなくして愛護協会の軽トラが 続いてパトカーが到着し
状況を少し説明して鹿がトラックで運ばれていくのを見送った

 


ひきつけを起こしたあとの鹿をじっと見ていた
命が身体から抜けていっているのがなんとなくわかった
だけど実際にいつ亡くなったかが判ったわけではない

 

ただ もう生きていない という状態になって初めて
そうなんだとわかっただけだった

手を合わせながらその瞬間にいさせてもらった


鹿を助けようとした彼女の行動を労いたくて背中を少しさすった
そして言葉をかけてその場を解散した

 

私はそれまでとはまた別の 少し離れたところに移動して
ベンチに腰かけ目を瞑って腹式呼吸を始めた
周りには日向ぼっこをしている鹿が沢山いる 大きい群れだ


ふと目を開けると群れの真ん中あたりにいた
一羽の鳩が飛び立っただけで鹿たちは驚いて
みんな揃って身体をぴょーんと躍動させた
つい笑いがこぼれた

 

そして想いが去来してくる


私だったらスマホがない…連絡出来ないし…と
とっさに思考を巡らせているあいだに
鹿を避けてきっと行き過ぎていただろう

助けたい純粋な想いを無視しかねない癖


あのあとすぐ自分の命がなくなったとしたら
最後に彼女みたいな人に会えたことを嬉しく思うだろう


そもそも 行動 は命がないと出来ないんだ

 

何をあたりまえのことをと思われそうだが
今日動いてくれた命がなければ私は思い知らなかったろう
これまで身近な命にお別れしたことは何度もあったけれど
今このようなときに体験したからこそ何かを思い知ったのだと思う


全てはうまくいっていることをもっともっと
その身体で気づいて体験してこい!


そう言われたようだった


鹿が車にはねられたこと その車がそのまま行ってしまったことを
うまくいっていると言いたいのでは決してない
けれどそう動いていなければ私は今日のことを得なかった

今日の命の動きから感じ得たことをこれっぽっちも零したくない
それを自分なりに文章にまとめたかった
まさにここまで書いてようやく腑に落ちた

そうか これが行動するということか


最初に書いたスーッ…と離れて行った若い鹿が
亡くなった子かどうか判るはずもない
確かにあちらの方向に歩いて行ったけれども
体躯が似ている時期の子どころか鹿が沢山いるところだ


あの鹿が離れていくときに何となく不思議な感じがしたことに
意味づけしたいだけなのかもしれないが

それでも こう漕ぎつけたい

もしあの子だったなら あの若い鹿の生きている時を
私は目のまえで見たんだ


生きて 動いて 群れから離れ 行動して 何かをしたかったんだ

 

 

 

人でも動物でも事故を起こしたらドライバーは絶対
車を止めてほしいと強く思う。

 

最後までお読みくださり、ありがとうございました。